技術分野
相平衡・物性
近年,既存の化学プロセスから省エネルギープロセス,環境調和型プロセスへの転換が各方面で行われており,その結果,これまで使用されることのなかった物質で構成される系の相平衡や各種物性が必要となっています.より高い精度のデータ提供や推算法の開発が求められており,分離技術会では速やかに企業からの要請に対応できるように,解説記事や出版物,講演会,実習を含む講習会を開催しています.
蒸留
本学会は,蒸留に関する現場の技術をよりよい技術に育てるため,会員相互の熱心な討論と情報交換を行う場として,1971年に蒸留技術懇話会として創立されました.この精神は現在の「分離技術会」においても継承されています.近年,蒸留プロセスの省エネルギー化が地球温暖化対策の観点から,また,微量成分の分離を目的とした蒸留プロセスの開発が環境保護の観点から求められています.本学会では,これらの問題に対応できるよう,解説記事,講習会・講演会を通して研究・啓蒙活動を続けています.
晶析
晶析操作は,結晶粒子群を創製するともに,目的成分のみを分離精製することが可能です。結晶化現象を用いた工業操作は,一般化成品や医薬食品分野のみならず,電池・エネルギー分野,環境分野で幅広く用いられています。そしてそれらの分野で要求される結晶あるいは結晶粒子群の品質も,結晶純度,粒径,粒径分布,結晶多形,結晶形態,結晶化度など、多岐にわたっています。分離技術会ではそれらの要求に実践的に対応できるよう講習会や講演会を開催し,また,解説記事などを通じて最新研究情報や技術動向などを発信しています.
吸着
吸着は,流体中の特定の成分を吸着材の表面に捉える操作で,目的成分の回収や不純物の除去といった分離技術に重要な役割を果たします.各種製造プロセスをはじめ,環境分野,資源・エネルギー分野など,様々な分野で利用されています.分離技術会では,産学の技術者,研究者の交流の場を提供し,吸着技術のさらなる進歩ならびに適用分野拡大に貢献するため,基礎研究から実践技術まで幅広い情報の収集および発信に努めています.
抽出
抽出は主要な分離技術の1つとして,その用途は多岐に及んでいます.石油化学における大規模な化学品製造プロセスをはじめ,電子材料,セラミックス,触媒などの高機能材料,またバイオ関連物質や機能性食品のための高度精製プロセスとしても利用されるようになってきました.抽出操作は分離剤として用いる溶剤の特性を生かすと高い分離選択性を得ることができ,かつ,大量に処理する租分離から高度分離まで多様な操作に応用できます.その鍵になる溶剤選択の手法を発展させて設計・操作への利用を図ることが重要です.
膜分離
膜分離は、高分子素材や無機素材などで薄膜を作製し、分子の大きさの違いや、収着、吸着特性の違いを利用して分離する方法です.連続操作が可能であり、相変化を伴わない場合などは、非常に高い効率で分離できます.そのため、現在は高分子膜を中心に、水処理、海水淡水化、純水製造など多くの分野で応用されています.また、近年は、無機素材を利用した膜の開発も進んできており、蒸留塔との組み合わせなど、過酷な分離系への応用が期待されています.
シミュレーション
近年、CAE(Computer Added Engineering)がプラントの設計・運転管理などに積極的に適用されています。このため、定常状態プロセスシミュレータ(プロセス設計)、非定常状態プロセスシミュレータ(制御性改善・安全性解析)、プロセス合成(省エネ・省資源・コストダウン)、オプティマイザー(プロセス設計最適化)、第一原理に基づく設計手法(分子軌道法・分子動力学)などの多様なツールが開発されています。そこで、国内外の各種多様なコンピューターソフトウェアや設計・解析手法を広く紹介することで、この分野における発信基地の一つになることを目指しています。
流体固体分離
流体固体分離は、流体(液体や気体)に分散した微粒子状物質を分離する技術の総称で、主な単位操作として、凝集、沈殿、濾過、脱水、集塵 などが含まれます。流体固体分離の応用は、上・下水道などの大規模プラントから、各種化学プラント、家庭用の浄水器などに至るまで多岐に わたり、分離対象の多様性から経験知が極めて重要な分野でもあります。講演会、講習会、書籍出版などの学会活動を通じて、ろ材(フィル ター、膜など)、装置、トラブル対策、用途開発など、関連する基礎知識の学習、最新の研究・開発動向、産業界でのトピックスなどの情報交 換の場を提供し、関連分野の発展を目指します。
その他の操作
生物分離操作(Bioseparation)は,従来から,生体細胞や生体分子(核酸,タンパク質(酵素,抗体)など)の特性に配慮した各種単位操作が開発されてきました(各種クロマトグラフィー,電気泳動,水性二相抽出,逆ミセル抽出など).また,古くから,生体適合性や各種機 能を付与した膜分離担体を中心に,各種の医療用分離操作(人工腎臓など)も発展してきました.近年は,医薬品製造プロセスにおけるキラル分離 操作,あるいは,医療診断や環境モニタリングのための高感度分析法に関する研究開発も進捗しており,未踏領域において適用できる高度分離操作の確立が望まれております.従来から蓄積のある「統計的分離操作」を基盤として,より分子・分子集合体に着目した「識別分離操作」の開発を通じて,生体/地球環境に適合した新規な分離技術の創成が期待されています.